グッド・アンサー

1 高校時代 (10) 並木通り

今日は、ゴールデンウィーク最終日。明日からまた、学校が始まる。

のんびりしたこの町は、塾や予備校に行く生徒はほとんどおらず、ゆっくり海に山にと、楽しく過ごしていることが印象だった。

といっても、僕も、山の田舎ぐらしだったので、海は新鮮だが、生活をゆっくり過ごす感覚は、同じだった。

今日も、あてもなく、ぶらぶらしていたが、ふと、休日の学校はどんな感じかな、と思い、高校に行くことにした。

いつもの坂道を登っていき、敷地に入ると、運動部がランニングしたり、練習試合をしたりしていた。音楽室からは、吹奏楽の音色が聞こえ、なるほど、休日の学校もいいものだな、と思った。

ただ、僕は、友達がいないことから、一人ぼっちであることは変わりなく、寂しさも少し感じた。

校舎に入り、誰もいない廊下、教室をうろうろしてみた。ふと、掲示板を見ると、先日の実力試験の結果が張り出されていた。当然、僕は、ビリの方だったが、成績の上位者の名前が貼りだされていた。今なら、個人情報保護で、このようなことはあり得ないが、当時は、それが普通だった。

英語、国語、数学、理科、社会、美術、体育・・・、勉強も運動も芸術も、できる人はできるんだな、うらやましいな、と思いながら、表を眺めていた。ふと、全ての教科で、同じ生徒番号が並んでいることに気付いた。全教科で1番を取るほどの実力がある人が、この学校にいることの驚きと同時に、いったいそれはだれなのかが気になって仕方なかった。番号の横には、名前が記されていた。

「さやか」

僕は、目を疑った。授業をさぼったり、授業を聞いていなかったり、不良グループのリーダーをしていたさやかが、まさかの学年1位とは。

少し立ち眩み、外にでて、休もうと思った。ちょうど、並木通りには、ベンチがあった。ベンチに座り、この1カ月の出来事を考えていた。いったいさやかは、何者なんだろう。

そんなことを考えていたところ、この前の不良グループの男子に囲まれていた。

「挨拶はどうした?」

「あ、すみません。おはようございます。」

「お前、さやかとは、どういうつながりがあるんだ?」

「いえ、なにも、なにもありません」

僕は、一刻も早く、この場から逃げないとと思い、歩き出した。

彼らは、僕を捕まえ、「生意気いってんじゃねー」、といいながらつかみかかろうとした。

僕は、目をつぶりながら、歯を食いしばった。その時、なにが起きたかわからなかったが、気が付いたときには、不良グループは、逃げていく後ろ姿だけが見えた。

助かった、と思い、地面に座り込んでしまった。とにかく、なにが起きたかわからないが、よかった。そう思った。

その様子を、一人の女子生徒が見ていた。その女子生徒は、美紀だった。

「え?あのでくの坊だと思っていた、哲也先輩、喧嘩強い!かっこいい!」

僕は、そんなことも知らず、立ち上がり、学校を後にした。

 

© 如花 康秀 2023-

1 高校時代編
(1) 出会い
(2) 引っ越し
(3) 再会
(4) 初登校
(5) 不良のリーダー
(6) カフェ
(7) 実力試験
(8) ゴールデンウイーク
(9) 気づき
(10) 並木通り
(11) 転機
(12) 友達
(13) 新しい生活
(14) 翌日から
(15) 体育祭

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