Yasuhide YUKIKA - 如花 康秀

1 高校時代  (1) 出会いの風景

海辺の町に足を踏み入れた哲也は、澄み渡る空と広がる白い砂浜に心を奪われた。しかし、父親の仕事のため、海での遊泳は叶わず、「海の家」での待機が彼の役割だった。水着を持参していない彼にとって、時間はまるで緩慢に流れる河のようだった。

そんな中、彼の視線を捉えたのは、店の一角にひっそりと鎮座する古びた業務用ゲーム機。厳格な両親のもとでは自由にゲームを楽しむことが叶わなかった哲也にとって、これは貴重な機会だった。周囲の目を気にせず、彼はゲーム機の前に腰を下ろした。

ゲームの世界に没頭するうち、気がつけば持ち合わせの小銭は底をついていた。もう少し遊びたい一心で、彼は躊躇いながらもレジに向かった。そこに立っていたのは、活発さが似合うショートカットの少女だった。

「ゲーム好きなんだね?」少女の無邪気な一言に、哲也は照れくさい気持ちを抑えつつも、心のどこかで彼女の明るさに引き込まれていた。彼女の手際の良い両替に感謝しつつ、再びゲームの世界へと戻った哲也だったが、彼女の笑顔は彼の心に小さな温かさを残した。

翌日、彼は何かを求めるかのように再び海の家を訪れた。しかし、少女の姿はどこにも見当たらず、哲也の心には小さな落胆が残った。彼は海辺を散歩しながら、自分の感情を整理していた。

そんな彼が見つけたのは、岩場に佇む小さな神社だった。風が強くなり、空は一変して暗雲が立ち込め、突如としてゲリラ豪雨が哲也を襲った。彼は慌てて神社へと駆け込み、そこで雨宿りをすることにした。

「雨、すごいね。」哲也が振り返ると、そこには昨日の少女が立っていた。彼女もまた、雨宿りを求めてこの神社へやってきたのだ。偶然の再会に、哲也の心は躍った。

少女は哲也に自分の名前を明かし、彼女もこの町の外から来たこと、海の家でのアルバイトの話を始めた。会話が弾む中、二人の間の距離は自然と縮まっていった。

しかし、その平和な時間は長くは続かなかった。突然、神社の側の大木に雷が落ち、大きな音と共に哲也と少女は意識を失った。

目を覚ました哲也の隣には父親の姿があったが、少女の姿はどこにもなかった。父親と海の家を後にする際、哲也は海をもう一度振り返り、あの出会いの意味を考えた。彼の心には、少女への感謝と再会への希望が静かに残っていた。

夏の日の出来事は哲也の記憶に深く刻まれ、彼の人生に新たな一章を加えた。それは哲也にとって、成長への第一歩でもあった。

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