グッド・アンサー

1.高校時代 (22) 紅葉

10月も下旬に入り、山の方では紅葉が始まってきた。これから11月末にかけ、色とりどりの紅葉が見られることだろう。

僕の方は、相変わらずだったが、少し、大学受験モードになってきた。プラズマを調べていくうちに、宇宙や電気や量子力学に興味が湧いてきて、調べたり、この世界はどのようにできているのかを考えたりするのが、楽しくなってきた。

周期表は、化学のものだと思っていたけど、化学も物理も関係ないわけで、当たり前のことだけど、受験科目を勉強することと、学問を学ぶことは、全く違うことだな、ということがわかってきた。

学ぶことが楽しくなってきて、かつ、なぜだろうと空想することも多くなっていた。

最近、図書館にいることが多かったが、たまにはマスターに報告をと思い、今日は、カフェに向かった。

「カランコロン」

「こんにちは」

「いらっしゃい」

マスターの声がした。

「久しぶりだねぇ。ホットでいいかい?」

「はい。お願いします」

コーヒーはサイホンを使っていて、いつも美味しいコーヒーを作ってくださっている。

「はいよ」

「ありがとうございます!」

僕は、久しぶりのコーヒーを口にした。

もう、コーヒーに慣れてきて、苦味を楽しめるようになっていた。

「さやかさんや美紀ちゃんは、最近来てますか?」

「あー、最近見ないなー。美紀ちゃんは、たまに哲也君を探しに来ることはあるけどね」

「そうですか。さやかさんは忙しいのかな」

僕は、残念な顔をしていたと思う。

そんな僕を見て、マスターは、情報をくれた。

「多分、街の予備校に通っているんじゃないかな。あの娘、勉強熱心だからね。」

そっか、さやかと僕とは、よく考えたら、住む世界が違ったんだよな。そんなことを、今更ながらに気づいた自分がいた。

「さやかさんの実家は、病院ですもんね。学年一番だし、医学部を目指しているのかな」

僕はそんなことを口にした。マスターは、

「本人は乗り気じゃないと思うけど、親戚一同から、それが求められていて、さやかちゃん、プレッシャーかもしれないね」

なるほど、そういう見方もあるのかと気付かされた。

「哲也君は、勉強の方はどうだい?」

「最近、毎日、図書館に通って、調べ物をしています」

「へぇー、熱中するものが見つかったんだね、えらい!」

マスターは、褒めてくれた。

そんな会話をしていると、ドアが開く音がした。

「マスター、久しぶりー」

僕は、はっと振り返った。そこには、さやかの姿があった。

「あ、哲也君も、久しぶりー。マスター、ホットください」

「今日は、バイトではなくて、お客さんなんだね。はい、ホット」

「ありがとうございますー」

「哲也君、元気だった?クラスが別れてから、なかなか会えなくなっちゃったね。寂しかった?」

といって、さやかは笑った。

「えっ、あっ、うんと、さ、寂しかった、かな。。」

久しぶりに会えた嬉しさと緊張で、声があんまり出なかった。

マスターが、

「ちょっと倉庫行ってくるね。ごゆっくり」

と言って、席を外してくれた。

「さやかさん、勉強の方はどうはどう?」

僕は、少し、現状についての質問を振ってみた。

「だんだん難しくなってきて、毎日、あたまがいっぱいかなー。」

「やっぱり、医学部とか目指してるの?」

「うーん。あんまり、その気はないんだけどね。親がうるさくて」

さやかは、少し下を向いた。

「本当は何かやりたいことがあるの?」

僕は、自分にも参考になると思って、聞いてみた。

「なんにも見つかっていないんだよね。でも、成績もいいし、家系もそうだからってね。本当は、やりたいことがあればいいんだけど。将来だって、楽しく幸せな暮らしがいいなって」

「個人を幸せに、社会を元気に、かな」

「うん。それそれ。私の理想なんだけどな。もちろん医者も、選択肢の一つなんだけどね」

さやかには、さやかなりの悩みがあるんだな、と感じた。僕は、さやかとやりたい方向性、生きるテーマは同じなんだ、ということに、安心感を覚えた。

「哲也君は、最近どう?」

「僕?僕は、勉強できないからね。でも、今、宇宙とかプラズマとか電気とか量子力学とか、図書館で調べてるよ。受験には役に立たないけどね。でも、学ぶって楽しいね」

今の心境を率直に、さやかに伝えた。

「プラズマかー。大きなエネルギーのことだよね」

さやかが興味を持って聞いてきた。

「うん。長老のところに、雷神社の伝説を聞きに行ったときに教えてもらったんだー」

「へぇー。なんか面白そうね」

さやかは、前のめりになり聞いてきた。

僕は、今まで学んだことを、さやかに伝えた。

「なんか、勉強になったなー。受験勉強の科目より楽しそうだし、いわゆる探究の学びって感じで、とてもワクワクするね」

さやかはそういいながら、メモを取り始めた。

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