グッド・アンサー

1.高校時代 (27) 人生の選択 古川さんの場合

古川さんが、まず先頭を切って、お話をしてくださった。

「私は、中学も高校も別に、やりたいことがなくてね。やりたいことを話している同級生が羨ましかったな。」

「そうだったんですか。」

「うん。それで、成績は良かったよ。親も周りもすごく褒めてくれてね。鼻が高かったなぁ。で、やりたいことがないけど、とりあえず、偏差値が高いところ、と言われてね。自慢だけど、受けた大学は全部合格したよ。」

「すごい!」

僕は、思わず、声を上げた。

「でもね、大学入って、まだまだなって感じてね。周りの人たちのレベルが違った。あと、本当にやりたいことがあって大学に入ってきている人と、不本意入学や偏差値が上だから、なんてことで入ってくる人の、モチベーションの差ね。」

「そっか、できる人は、そういう悩みもあるんですね」

「でも、私は、それなりに頑張ったよ。せっかく入ったんだし、親もお金払ってくれるわけだからね。ちゃんと親孝行しなきゃって。で、大学院に行って卒業して、いい会社に入ったんだけどね。結局、会社、やめちゃった」

「古川さんは、何が専門なんですか。」

僕は、専門が気になった。

「うーん、気象学かな。」

「今で言う気象予報士みたいな?」

「そうだね。自然を相手にするからね。物理や化学、生物や地学、地理、宇宙、電気や機械、建築や土木など、あ、もちろん数学もね、あらゆるものを総動員する学問だね。」

「じゃー、高校の勉強や入試対策でついていけない僕には、とても無理だなー。」

僕は、やはり、生まれつきの能力がないと、大学ではやっていけないんだな、だめなんだな、と思い、自分の能力の無さを恨んだ。

「そんなことないよ。そんな事を考えちゃだめだよ。今、僕は漁師だよ」

古川さんは、そう言って、笑った。

「いや、漁師は、僕たちの暮らしを支える大切なお仕事じゃないですか。よくテレビで、漁師さんの特集やっていて、かっこいいな、って思いますもん」

僕は、正直な考えを述べた。

「ありがとう。そう言ってくれると、やる気が出てくるよ。私が学んだ気象学も、漁の仕事に活かしているんだよ。ハイテクを使ってるだよ。今で言うところのDXと漁業の掛け算かな」

「なんか、すごそうですね。かっこいい」

僕はそう言って、尊敬の眼差しで古川さんをみた。いい会社を辞めてしまったけど、やりたいことを大学や会社で見つけたんだと思った。地元で、もしかしたら、実家が漁師を生業にしていたからかもしれないけど、でも、何かと何かを掛け合わせるという発想は、なかったな、と素直に思った。

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