グッド・アンサー

1 高校時代 (15) 体育祭

ゴールデンウィークもあけ、五月晴れが続いていた。紫外線は意外と強く、日差しが強くなってくるのを感じる季節になった。

そして、このさわやかな時期に、僕の高校では、毎年、体育祭が開催されていた。

もちろん、運動音痴の僕にとっては、最悪なイベントであり、運動が得意な人にとっては、一世一代、注目を受けるチャンスというイベントである。

クラス対抗と学年混合チームの2種類の参加形式があり、それぞれのクラスや有志のグループが、参加協議を決める会議を開いていた。

僕は、転校してきたばかりということもあり、また、この前の喧嘩で負けたことになっているため、率先して名前が出てくることもなく、誰からも誘われず、会議も平穏に終わろうとしていた。

それはそれで、僕にとってはラッキーだった。

さやかは、というと、運動も得意なこともあり、いろいろと名前が挙がっていたが、本人は拒否を貫いていた。みんなは不思議に思っていたと思うが、僕は、その理由がなんとなくわかった。みんなが楽しく、みんなが活躍できるようにと配慮しているんだろうな、と思った。

会議が終わり、僕の名前は特に出ず、クラス全体で参加する大縄跳びだけの参加となった。安堵し教室を出て、いつもの坂道を下っていくと、美紀が声をかけてきた。

「先輩。一緒に帰りましょ」

「え、あ、うん、いいよ。」

どういうわけか、最近、美紀が声をかけてくることが多くなっていた。

「先輩、体育祭は、どの競技に参加するんですか?」

「いや、僕は、運動音痴だからね。大縄跳びだけだよ」

「え、そうなんですか。先輩、何でもできそうなのにー」

と美紀はいいながら、微笑みを返してきた。僕は、変な誤解をされているな、と思いながら、一緒に坂を下って行った。

「今日も、カフェ、寄りませんか?」

美紀は、そう提案してきた。特に用事もなく、そのつもりだったので、

「いいよ、行こう」

と答え、カフェの扉を開けた。

「カランコロン」

「いらっしゃい!」

マスターの声で出迎えがあった。

「おじゃましまーす」

いつものように、美紀が声を上げた。

マスターから

「あれ、今日は、二人一緒なのかい?」

と問いかけがあった。僕は、坂の上でばったり会ったから、一緒に下校している、と説明をした。

なんだか、冷やかされているような、そんな感じだったので、一生懸命、言い訳をしている自分が、なんだかおかしかった。

「二人、お似合いなんじゃない?」

さやかが、話しかけてきた。

「さやか先輩もそう思いますー。哲也先輩、私たち、お似合いですって!」

美紀は、うれしそうに、はしゃいでいた。

僕は、なんだか、居心地が悪い感じだった。

その後も、美紀はことあるごとに、話しかけてくれた。美紀の家と僕の家は、同じ方向だったこともあり、一緒に登校したり、一緒に下校したりすることが多くなっていった。

少しずつ、美紀のことがわかってきたし、その明るい元気な笑顔と行動が、僕の気持ちを和らげてくれる存在になっていったのは間違いなかった。

一方で、さやかとは、校内では平常通り話をしないが、カフェでもあまり話す機会がなくなってきているのも感じていた。目も合わせてくれないことが多くなっていた。それが、なんだか、気がかりだった。

体育祭当日になった。

特に、問題もなく進行し、大縄跳びも無難に済ませ、一安心だった。

15時をまわり、体育祭も終わったと思ったが、実は、後夜祭があり、フォークダンスを輪になって踊る、というイベントがあるのを知らなかった。

フォークダンスは聞いたことはあるが踊り方がわからない状態ではあったが、全員参加、ということで、見よう見まねで、参加することになった。

男女がペアになるようになっていて、順番に入れ替わるという方式だった。

女の人と手をつなぐ、ということが、初めてであり、緊張で、なにがなんだかわからない状態だった。フォークダンスの曲が流れ、順番に人が入れ替わっていく中で、美紀とのペアとなった。美紀は慣れていて、僕を誘導してくれた。それは、本当にありがたかった。

そして、その次の人は、さやかだった。最近、あまりよい関係ではなかったのと、直前が美紀とのペアということもあり、気まずい空気が流れている気がした。そして、次の順番となるときに、曲が終わり、踊りも終了となった。

ある種、ほっとしたと共に、この気まずい雰囲気は、このまま持ち越すことになってしまった。さやかは、目も合わさず、そのまま、教室の方に戻っていった。

美紀からは、お礼があり、今日も一緒に帰ろうと誘いがあった。僕は、うん、と答えるしかなかった。

 

© 如花 康秀 2023-

1 高校時代編
(1) 出会い
(2) 引っ越し
(3) 再会
(4) 初登校
(5) 不良のリーダー
(6) カフェ
(7) 実力試験
(8) ゴールデンウイーク
(9) 気づき
(10) 並木通り
(11) 転機
(12) 友達
(13) 新しい生活
(14) 翌日から
(15) 体育祭

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