グッド・アンサー

1 高校時代 (19) 病院

狭い町だからか、僕が入院したことは、あっという間に、高校中の噂になっていた。

しかし、ここは、高校の隣の駅で、病院以外は何もない無人駅だった。海岸沿いにあり、トンネルとトンネルの間にある駅で、道からのアクセスも難しく、誰も用事がなければ、降りる人もいないところだ。逆に、救急車も入るのが難しい立地で、なぜ、ここに病院があるのかも不思議だった。

この病院は、温泉と老人ホームも整備されており、どちらかというと普通の病院というより、療養生活を送るための湯治のような場所なのかもしれない。

ここで、僕は、6月から9月まで、療養生活を送る事になった。熱は平熱に戻ってきたが、体力が失われており、復活するには程遠い感じだった。

少し歩けるようになったので、病院を探検してみた。鉄筋コンクリート3階建ての病院で、受付、診察室、処置室、病室、手術室、老人ホーム、温泉浴場、お店、美容室など、それなりに設備は充実していた。しかし、入院患者はまばらで、外来も空いていた。

建物の中心には、芝生の広場があり、どの部屋からも明かりが取れ、地震にも強い構造になっていた。

梅雨も開け、7月で蒸し暑い季節であったが、外の屋根付きベンチに座り、少し気分を落ち着かせようとした。建物の構造上、海風は入らないかと思ったが、案外、四隅が開放されている作りだったので、潮風が心地よかった。

いつものように目をつぶっていると、後ろから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「また、寝てるの?」

声の主は、さやかだった。

「えっ?なんでここにいるの?」

僕はびっくりして振り返った。

「やっと見つけた。心配してたんだよー」

さやかは、そう言って、僕の隣りに座ってきた。

「ここは、病院だし、勝手に入ってはまずいんじゃない」

僕は、突然のことに驚きつつも、そんな事を言った。

「大丈夫よ。」

「え?どうして?」

「だって、ここは、私の親が経営している病院だから。ようするに、私の家も同然なの。」

僕は、びっくりした。確かに勉強もできるし、ミステリアスな人だと思ったけど、勉強に興味がないとか話してたけど、なるほど、こういう背景があったんだ。

もしかしたら、不良グループのリーダーをやっているのも、弱い生徒を逆に助けるため?、そんなふうにさえ思え、ますます、さやかの考え、生き様は、すごいなと思った。

「体調は大丈夫?」

僕を気遣ってくれる言葉が嬉しかった。

「大丈夫。まだ、少し体力が戻ってないけどね。」

と言って、胸を張った。

「哲也君は、心優しくて、面白くて、いざとなったら、不思議な力でみんなを守り助けることができるんだね。」

「そんなことないよ。僕は平凡以下。なんにもできない、変なやつだよ」

「そうかなー。でも、私、変な人、好きだよ」

さやかは、そんなことを口にした。僕は、すこしドキドキしたが、あまり気にしないように振る舞った。

「さやかさんの探している人、見つかった?」

僕は、単刀直入に聞いてみた。

「うーん。どうかな。でも、もう少しで見つけられそうかもね。」

そんな意味深な言葉をかけてきた。

「哲也君は、美紀ちゃんのこと、どう思っているの。美紀ちゃんは、哲也くんのことが好きみたいだよ。はっきりさせた方が良いんじゃない?」

僕は、上を向き、答えに躊躇した。

「ああいう、元気な子がタイプなんでしょ」

「うーん。僕は、前にも行ったと思うけど、中身、その人の人間力のほうがひかれるかなー。」

さやかは、それを聞き、こんな話をしてきた。

「私ね、昔はやんちゃで、Tシャツに短パン。真っ黒に日焼けして、走り回ってたんだよー」

「へー。いまからは想像できないなー。」

「ある人に言われてね。もっと大人らしい格好のほうがいいよって」

「そのある人って、探している人?」

僕は、即座に質問をした。

「そうね。そうだったかもしれない。なんかオドオドして、はっきりしない、優柔不断な人だったんだけど、困ったときには、すごく頼りなる人だったな。今どこにいるんだろう」

さやかは、そう答えた。

だんだん陽が沈んできて夕焼けになってきた。

僕らは、ベンチを出て、病院と駅の間にある坂道に来ていた。夕陽が坂道に当たり、海や空は赤く染まり、とても雰囲気が良い坂道だった。

僕は、さやかの歴史を聞き、自分の話をする番だと思い、11歳の夏の神社の話をした。

さやかは、くすりと笑って、

「そんな体験があったんだねー。あの神社は、実は、雷神社なんだよ。伝説では、100年に一度、誰かに魔法の力を与えてくれると言われているみたいよ。」

僕は、伝説を信じる方ではないが、なんか、今の僕に降り掛かっている動きを考えると、まさかと思った。

「哲也君、私が探していたのは、あなただったの。今、やっと確信が持てたわ。」

「え、じゃー、あの時のあの娘は、さやかさんなの?」

本当に驚いた。僕も心のなかで、あの子を探していたんだと思う。

「ちょっと待って、ということは、僕には、魔法の力が宿っているの?」

「そうよ。でも、使い方を間違えてはダメ。悪いことに使うと、使えなくなっちゃうという言い伝えよ。」

「そうなんだ、でも、どうやって使うことができるのか、コントロールができないし、わかんないや。」

そう言って笑った。

なんだか、すこし、自分に自信がついてきた気がした。

「僕は、ずっとあの時のあの子を探していました。それは、さやかさんでした。あの時は、ありがとう。やっと見つけることができた」

そう言ったら、僕の目から涙がこぼれてきた。

さやかも同じだった。そして、二人で、沈む夕日を眺めていた。

 

© 如花 康秀 2023-

1 高校時代編
(1) 出会い
(2) 引っ越し
(3) 再会
(4) 初登校
(5) 不良のリーダー
(6) カフェ
(7) 実力試験
(8) ゴールデンウイーク
(9) 気づき
(10) 並木通り
(11) 転機
(12) 友達
(13) 新しい生活
(14) 翌日から
(15) 体育祭
(16) 梅雨
(17) 踏切
(18) 待ち人
(19) 病院

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