グッド・アンサー

1 高校時代 (20) 退院

9月までの療養生活ということで入院をしているが、町と高校と病院の配慮で、高校の勉強や試験はなんとか受けることができ、二学期に進むことができた。これは、関係者に感謝であった。

僕の体調も良くなり、お医者さんや看護師の皆さん、スタッフの皆さんにお礼を言って、病院を後にした。

さやかにも、たまに会うことができ、勉強を教えてもらったり、高校の出来事などを教えてくれた。

美紀は、会いたがっている、ということだったが、流石に病院までは来ることはなかった。

9月になり、自宅に戻り、また、学校生活が始まった。久しぶりの学校、教室、クラスメートとの再開など、雰囲気を味わい、懐かしい気持ちだった。

なんとか、二学期まで進めたものの、授業には身が入らず、チンプンカンプンだった。

相変わらずではあったが、それでも学校に行くことは、退屈しのぎには良かった。

高2の夏も過ぎ、周りは、勉強モードになってきた。理系文系の選択もあったが、自分がやりたいことがまだ見つからず、でも、雷や魔法には縁がありそうだったので、理系を選んだ。

数学は全くだめで、理科もだめだった。でも、自然現象を数式にしていくことは、なんとなく楽しかった。仮説を立てたり、答えを想像したりするのは、ワクワクした。でも、それを解いて答えを導くことは、まるっきしだめだった。多分、その部分になると、興味がないというか、集中力が落ちてしまうのが原因かもしれない。

あと、数学も理科も、問われている問題がわからなかったな。これは、国語力のなさが問題だった。

受験モードに入っていくクラスメートを横目に、僕は、相変わらずの生活を送っていた。学校が終わると、いつものカフェに行き、人生や人間力を学んでいた気がする。

美紀とは久しぶりに、カフェで会った。スマホも携帯もポケベルもない時代だから、一度連絡が取れなくなると、どうしょうもなかった。そういう意味では、人と人が会うということの貴重さをとても感じる機会であった。

カフェの扉を開けると、

「わー、哲也先輩、元気でしたかー」

元気な美紀節で出迎えてくれた。

「心配してたんですよー。さぁ、入って!入って!」

美紀に誘われるままに、カウンターに座った。

このカフェは、時間が止まったように、なんにも変わってなかった。お客さんも誰もいない、平常運転だった。

「さやか先輩から聞きました。入院してたんですよね」

「うん。そうだったんだ。長くかかっちゃったな」

「もう、どこの病院なのかもわからないし、連絡ぐらいけれればよかったのに!お見舞いに行きたかったー」

美紀は、口を尖らせながら、僕に言葉を投げかけてきた。

「本当にごめんねー。美紀ちゃんは元気だった?」

僕は、これ以上責められないように、話を変えた。

「元気でしたよー。海水浴したり、プールに行ったり、山登りもしたよ。あ、さやか先輩は、海の家でバイトしてたみたい」

「そうだったんだー。今日は、さやかさん、いないね」

マスターが、

「なんか、今日は街まで行くっていってたな」

と答えた。

「そうなんですねー」

僕は、なにか用事でもあるのかな、とあまり気にしなかった。

「そろそろ、受験もあるけど、理系文系とか、やりたいこととか、なにか決めた?」

マスターは、僕に問いかけた。美紀も興味津々な顔をしていた。

「そうですね。なんとなく理系かなって。まだやりたいことは見つかってないんですけどね。」

「へー、哲也先輩、理系なんだ!すごーい!」

美紀は、大きな声を上げた。

「先輩なら、何でもできちゃうもんね!」

「哲也君、理系なんだね。いい選択だと思うよ。あとは、何をやりたいかだよね。」

「そうなんですよね。何か自然現象を扱ってみたいし、コントロールもしてみたいなとか、あ、大きなモチベーションは、みんなのため、一人ひとりが幸せで、社会全体も幸せになることかな。」

僕は、言葉にすることで、自分の考えを整理する感覚になっていた。

「なるほどねー。いいんじゃない。つまり、社会全体の幸福だけでなく、一人ひとりの個人も幸せにならないと、ギスギスした世界になってしまうの、ということかな。」

さすが、マスターは、昔、若い頃悩んでいた、って言ってたけど、人生観というか哲学というか、そんな物を持っているなと感じた。

美紀が、

「個人も幸せに、社会も元気に、なんてどう?」

と提案してきた。

「いいねぇー。それ使わせてもらおう!」

僕は、そのフレーズが気に入り、早速、メモをした。

「少し、自分がやりたいことが見つかった気がするな。一見、文系みたいだけど、これを実現するためには、文系とか理系とかの力が、両方必要な気がするかな。哲学、経済学、社会学、人間学、環境学とかもね。」

「哲也先輩、かっこいい!」

美紀がそう言って、みんなで笑った。

理想はそうなんだけど、どこの大学のどこの学部に、こんな事ができるところがあるんだろ。僕は、方向が見つかったが、その手段がわからなくなっていた。

© 如花 康秀 2023-

1 高校時代編
(1) 出会い
(2) 引っ越し
(3) 再会
(4) 初登校
(5) 不良のリーダー
(6) カフェ
(7) 実力試験
(8) ゴールデンウイーク
(9) 気づき
(10) 並木通り
(11) 転機
(12) 友達
(13) 新しい生活
(14) 翌日から
(15) 体育祭
(16) 梅雨
(17) 踏切
(18) 待ち人
(19) 病院
(20) 退院

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